しもだやにまつざいく
下田脂松細工

下田脂松細工

伊豆下田は南使豆の温泉地であり、また日本の夜明けを告げる桧舞台となった歴史の町でもあります。
黒船来航以前から、下田港は関西と江戸を結ぶ中間の港として栄え、船頭歌にも「伊豆の下田に長居はおよし、縞の財布が軽くなる」と歌われ、その盛況ぶりがうかがえます。

港を中心に発展した港町下田ではありますが、山林資源は豊かで伊豆の天城山系から切り出される材料には良質のものが多く、建築・建具・家具指物用材として昔から幅広く珍重されてきました。
伊豆の指物師達はこれらの用材でものづくりをする一方、伊豆の島桑として知られる三宅・御蔵島材も加工し、桐材は会津産のものを用いてものづくりをしてきました。
このものつくりに携ってきた職人達はその多くが天保の頃(1830〜1843)から下田にあった加賀屋から出ているといわれます。
加賀屋は、たくさんの職人を抱え、家具とか建具を製造し、優秀な指物師を育て、世に送り出したといわれています。
これらの指物師の中には東京に出て修業し、江戸指物の伝統技術を習得した者もいます。

下田の指物細工は、これら職人の間で研鑽された優秀な技術が受けけ継がれ、天城の山中から切り出された黒松を素材として硯箱・銘々盆小抽出し等に加工され、上品な指物細工が作られています。
これは伊豆の下田の産業史の中で伝統の美を伝えながら脈々と息づいています。
下田を訪れたならばこの秘められた工芸の妙を確かめてほしいものです。

主要製品、硯箱、銘々皿、茶卓、花台、抽出小乱、盆、箸箱、食卓

(静岡県商工部地場産業課発行「しずおかの郷土芸品」より引用)


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