〜トムソーヤ倶楽部ニュース〜駿河竹千筋細工にひかれる 千代谷雅貴さん(沼津市、49歳)
「ほら、これ見てください」。駿河竹千筋細工の虫かごをそっと手のひらにのせ、いとし子を見つめるかのように目を細めるのは千代谷雅貴さん(沼津市)。
素人が作ったとは思えない、立派な虫かごがそこにあった。四年ほど前、静岡に住む恩師を訪ねた帰り、JR静岡駅構内の駿府楽市に立ち寄った。そこで見た駿河竹千筋細工に心ひかれるものがあった。
「江戸時代から続いている静岡市の伝統工芸でしょう。教えてもらうのは無理だろうと思ったけど、作りたかったですね」その思いをかなえたのが、「おーい!トムソーヤ」だった。テレビに出るのは恥ずかしかったが、作り方を知りたいと思い切って申し込み、虫
かごづくりが実現した。
千代谷さんが作るのはすべて虫かご、イメージする虫はすべてキリギリス。それは、子どものころの懐かしい思い出につながる。千代谷さんの生まれは北海道。
「小さいころ、外で力ブトムシや魚を捕まえて思いっ切り遊びましたね。
夏、家の軒下でギーッチョンとキリギリスが鳴くんですよ。今でもキリギリスの鳴き声を聞くと、北海道を思い出しますね。だから、かごの中はキリギリスじゃないと、だめなんです」大工だった父親の血を受け継いだのか、子供のころから竹馬や水鉄砲を器用に作ったものだ。その血がムズムズと動いて、駿河竹千筋細工にはまりこんでしまったという。
自分で真竹を探しに行って、煮て、乾かし、切っていく。等間隔に穴をあける時は真剣勝負。一つ狂うと作り直しだ。空いた時間に、少しずつ作っていく。だから、完成したらしばし眺める。「至福の時です」と語る。「四十個ぐらい作りましたが、絶対同じものはできない。これが手作りのよさですよ」と、作品を手に満足そう。
一番最初に作った虫かごは、キリギリスを入れて両親にプレゼントした。そしてトムソーヤ倶楽部の、気の合う仲間も感激してくれた。
虫かごを作りながら、子どものころの思い出が詰まっている、ふるさと、北海道に思いがいく。
いつか北海道のキリギリスを虫かごに入れてみようと思っている。それが、千代谷さんの駿河竹千筋細工の原点だから。静岡新聞 2002年2月17日 日曜版より引用しました。
トムソーヤ倶楽部というのは、いろいろなことにチャレンジする人を応援する静岡のローカル番組です。竹細工だけでなく、藍染めもやっていましたね。
番組だけで終わらずに、こうしてこつこつ立派に続ける方を見るとうれしくなります。
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