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苦労して、弟子入りしてもそこがゴールではなく、スタートですよね。

職人になってからが一番大事です。竹細工の場合でしたら毎日竹割りや竹曲げの連続のように地道な日々が待っています。この地道な作業が、技を鍛えてくれますのでこつこつとがんばっていきましょう。

何十年のベテランも「まだまだ、勉強することがたくさんある」とよく言います。一生修行の世界ですね。


独立

弟子入りの所でも書きましたが、伝統工芸の工房は、住居の一部になっていることが多く、家族の中で、後継者のいない職人さんが、廃業した場合、家の一部を、他人に使わせ続けられません。

また、親方が、未熟な弟子を抱える経済的な負担は、かなり厳しい物があります。
サラリーマン職人の若い弟子は、時間でお金をいただくので、丁寧ですが、じっくりやってしまいます。
また、親方も見かねて、つい手伝ってしまうことが多いです。

弟子が、親方の仕事を受ける形にすると、親方は経済的に楽になるだけでなくて、弟子のレベルアップになります。

弟子自身は、今までのようにのんびりやっていると、経済的に苦しくなりますので、サラリーマン職人でいるときよりも、仕事の時間を長くするなどで、仕事をこなします。

まだまだ、未熟な弟子は、せっかく作っても、出来が悪いと、親方に買ってもらえません。
そこで、弟子は、親方のもとで、当たり前のように教えてもらっていたことの意味を考え直します。

○工房の家賃

私は、工房の家賃はかかりません。自宅だからです。

でも、普通は独立して、最初にぶつかるのが、工房探しと、家賃ですね。
工房ですと、普通の住居と違い、割り増し料金を取られる場合もあるようです。

木工なんかですと、機械を入れなければできません。そうしますと、場所だけでなくて、機械まで購入しなければなリません。

以前、蒔絵の工房を訪れたことがありますが、普通の和室で、お仕事をしていました。
こうした、場所をとらない仕事なら、家庭でも、できますね。

毎月、何万円も決まってでていくのは、始めたばかりで、収入のあてもない、ひよっこ職人には厳しい物があります。
本当は、このように自宅でできるのが、一番だと思います。

また、仲間で、工房を借りるというのは、経済的に楽ですし、励まし合うこともでき、また足りない部分を補いあうことができます。

静岡市には、クラフトマンサポート制度があり、家賃の補助があります。
全額ではありませんし、また期間限定ですが、こうした制度を利用して、独立することもいいですね。

独立というのは、本当に難しいのですが、まず、将来利用できる場所の広さを、あらかじめ考えながら、お仕事を選ぶことも大事かなと思います。

○仕事

独立は、ゴールでなく、スタートです。独立したばかりのひよっこ職人さん、どんな仕事があるでしょうか?

大きく分けて、親方の下請けと、オリジナル作品作りになりますよね。

1.親方の下請け

修業時代の延長線です。下請けなので、ちょっぴり安かったりします。
竹細工だと、わっかを曲げたり、網代を編む、ひご差しだけやるとか言う仕事もあります。黙々と作る、職人タイプの方におすすめです。

親方がたくさん仕事を持っていないと、回ってきません。また、親方と同じように作る技術がなければ、親方に買ってもらえませんので、結構大変です。

2.オリジナル作品作り

せっかく、修行したので、オリジナルの作品に挑戦しましょう!
自分でデザインを考えたり、デザイナーにお願いしてもいいですね。

ただ作るのは、趣味です。販売先を考えてみましょう。

○販売先

独立して困ることが、2つあります。
一つは、身近でお手本となり、またアドバイスしてくれた親方と別れてしまい、技術的に自立すること。
もう一つは、販売先の開拓ではないでしょうか?

いくら、作っても売れなければ、お金になりません。
さて、どうしたら売れるでしょうか?

販売先は、大きく分けると、直売と、卸売りに分かれます。
直売は、工房兼店舗にしたり、駿河屋のようなネットショップなどですね。
卸売りは、お店などに卸して、売ってもらいます。


○直売
オーダーメイドを受けられれば、お客様と直接お話をして、制作します。
工房に看板を出したり、タウンページなどに広告を出して、何ができるかを、宣伝しましょう。
また、ネットショップを開いても楽しいですね。
こだわりを、皆さんにお知らせしましょう。

初めは、それほど仕事はないと思いますが、一つ一つの仕事をていねいに、誠意を持ってのぞんでいけば、口コミで、仕事がつながっていきます。

この直売の良いところは、手数料を取られないことですね。
卸売りですと、もちろん、販売先に手数料を取られます。

その分、金額や内容でサービスすると喜ばれますね。


○卸売り

卸売りは、お店などに卸して、売ってもらいます。
卸売りには、大きく分けて、委託と買い取りがあります。

○委託は、お店などにおいてもらって、売れた分だけ、お支払いをしてもらいます。

実績のない初めてのお店にとって、新しい商品は、売れなかったらどうしよう、などと後込みされることが多いですね。
特に、こちらから売り込みに行ったりすると、いきなり買い取ってと言っても、お店は嫌がります。

委託にすれば、お店は、売れなかった場合、支払わなくても良いので、おいてくれる確率が高くなります。

ただ、売れなければ支払わないと言うことは、売れなければ、お金が入ってこないので、職人さんは、いつまでたっても、収入がないと言う厳しい状態になります。

また、お店の方も、売れなければ支払わなくていい、という楽な気持ちになって積極的に売ってくれない可能性があります。
お店との信頼関係を作って、しっかり売ってもらうよう努力しましょう。

○買い取り
最初は委託で始めても、実績ができたら、買い取ってもらいたいですね。
委託の時よりも、納める率を、低くしましょう。

たとえば、委託の時に、売れた金額の30%をお店に払うということにしていたら、買い取りは、50%をお店に払う、つまり、50%で納めるなど、買い取りの時の方が、お店にとってお得、というようにしましょう。


○実演販売

実演は、お客様と直接ふれあえる楽しさ、また宣伝効果やもちろん、商品の販売もできます。

さて、この実演販売ですが、経費がだいぶかかります。

地元のデパートやイベントでしたら、経費は大したことはありませんが、泊まりがけで行く場合は、交通費や宿泊費、食費など、1日当たり最低、1万円はかかります。
また、準備などの日にちを考えると、1週間で10万円ほどかかってしまいます。
ですから、できれば、通える場所での実演がいいですね。

せっかくですから、はじめに書いたように、お客様とお話をして、作品の良さを感じてもらったり、反対に、お客様が何をして欲しいのかを、よく聞いておきましょう。

また、都会へ行ったら、まわりの商品をよく見て、どんな展示方法をしているのか、どんな商品が好まれているのかも、見てきましょうね。

職人展などで、他にも実演などしている方がいましたら、現状など聞いてみるのも、良いですよ。


実績のない職人さんは、販売にとっても苦労しますが、よい製品を作ることで、お客様やお店に信頼されるようにがんばりましょうね。


技術は盗もう

弟子入りする、しないに関わらず、技術というのは、教えてもらうものでなく、盗むものと思っていた方がいいです。

だいたい職人は教えるのが仕事ではなく、作るのが仕事なので、効果的に教えてくれるとは限りません。親方の仕事をしっかり見て、技術を盗みましょう。

なお、盗むのは技術だけで、道具やお金をこっそりくすねたり、やめるついでにお得意さんを盗んではいけませんよ!


自分の時間

仕事以外の時間の使い方がポイントです。

組合などに入って仲間を作りいろいろな情報を交換したり、工芸展に出品したり個展を開き、知名度や技術、作品を向上させたりと、つねに前向きに行動することが大事です。

いい職人は、仕事をしている間だけでなく、仕事をしていないときも24時間職人です。大好きな仕事とずっと一緒でうれしいですよね。


仲間作り

産地に組合などがありましたら入れてもらい、横のつながりを持つと楽しくなります。
職人は、サラリーマンと違い、通常は、閉ざされた世界です。
もくもくと作品を作っていると、一歩も外へ出なかったり、家族以外、誰とも口をきかなかったりが、毎日続くこともあります。

孤独になりやすいので積極的に仲間を作りましょう。
異業種の職人さんとも仲良くなれると、考え方も広がりますよ。


公募展

作品に自信ができたら、工芸展などに出品してみるのも楽しいですね。

何か目標があれば、それに向けて何をしたらいいかがわかりやすいですからね。
とりあえず、市とか県の主催のコンクールとか試しに出してみましょう。

出品すると、他の作品もよく見るようになり、見る目も高くなるでしょう。できれば、全国展に出してみると、世界も広がるでしょう。


伝統工芸士を目指そう!

伝統工芸士の資格は、伝産協会にて、認定されます。
詳しくは、日本伝統工芸士会のページに載っていますが、次の通りです。

1.伝統工芸士になるには
 産地委員会を通じて受験申請を行い、(財)伝統的工芸品産業振興協会が実施する伝統工芸士試験に合格することが必要です。受験資格として、経済産業大臣指定伝統的工芸品の製造に現在も直接従事し、試験実施年度の4月1日現在12年以上の実務経験年数を有し、原則として産地内に居住していることが条件となっています。

 試験は知識試験と実技試験により審査されますが、12月中旬の合格通知後、産地委員会を通じて登録申請を行い伝統工芸士として登録されます。

伝統工芸士は、経産大臣指定の伝統的工芸品の職人に限られています。指定されるには、組合が必要なので、この組合員の職人に教わっていないと難しいでしょう。

伝統工芸士は、以前は、本当にベテランのすぐれた工芸士にのみ与えられていた難しいものですが、今では、試験を受けてなることができます。がんばってチャレンジして下さい。


夢と行動力!

職人を目指す若い方がいるというのは、私達からみると本当にうれしいことです。

今までは、私達のまわりには、高齢の方が多かったのですが、最近数人の若い方がはじめてくれました。
まだまだ、あぶなっかしいところがありますが、業界が華やかになり、未来を感じることができるようになりました。

和風がブームといわれますが、工芸の世界は、だいぶ厳しくなっています。
中国からは、安い製品が入ってきて、それも年々レベルがあがってきています。

そんな中ですが、消費者は、しっかりと本物と、そうでないものを分けているようです。
インターネットの普及で、作り手の気持ちが伝わる、顔の見える作品作りが、できるようになりました。

ですから、これからの若い方は、自分の思いが伝わる作品作りをしていってほしいと、思います。

そのためには、3つの事が大事だと思います。

第一に、好きな仕事を見つけることです。
朝から晩まで、仕事の時も、そうでない時も、ずっとそのことを考えていたくなる仕事を見つけましょう。

第二に、情報が大事です。
せっかく作った商品と似たものが、近所の100円ショップで売っていた、なんて事は良くあることです。
また、今、世間では何が、求められているかをいつも感じていましょう。

第三に、師匠を早く追い越しましょう。
技術も経験も、はるか雲の上と思える師匠を持つことは本当に大事です。でも、その師匠を、追い越してこそ、恩返しであり、未来へその技術をつなげることです。
すべてを追い越すことは、難しくても、なにか一つでも師匠より上、というものを持ちましょう。

この三つをかなえるのは、夢と行動力、と思います。
いつも、夢を持ち、思ったらすぐ、行動!
まず、失敗しなければ、前進はありません。
失敗を修正しながら、ドンドン前へ、進んでいきましょう!

ではすてきな職人を目指してがんばって下さいね。(^O^)/



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