「駿河竹千筋細工」ができるまで

伝統工芸品「駿河竹千筋細工」の技法を紹介します。

昔は、同業の人が入ってくると、親方が弟子に「手を止めろ」 と怒鳴ったそうです。一般の方にも、絶対に見せない、かなり閉鎖的な世界だったようです。

今では、職人さんたちは、和気あいあいと集まって研究会を開き、 それぞれの技術を交換しあうことで、よりよい作品が生まれています。
また、竹細工などの実演や、体験教室も年に数回開かれ、 一般の方々にも親しまれています。工程は、大変多く道具も必要です。


1.竹材の仕込み


竹材

駿河竹千筋細工の材料は、苦竹(まだけ)、孟宗竹(もうそうちく)です。
主に、静岡市内から、車で30分ほど、藤枝市岡部町の竹を使っています。

真ん中の苦竹は、節と節の間が長くて、どちらかと言えば、薄いのですが「竹を割ったような性格」というのにぴったりで、パンパンと割りやすいです

右の孟宗竹は、厚いいところでは、1cm以上ありますが、かたくて、割るのが大変です。
この両方を使う場所に合わせて、使い分けています。

生の竹は腐りやすいので、油ぬきということをします。
苦竹も孟宗竹も切りたては左のように青いのですが、大きなかまで煮て、何日も干して乾燥させると黄色っぽくなります。こうなると加工しやすくまた長持ちしますよ。

1竹取。

この作業は、私達はしません。山の専門家にお任せします。竹林に印を付けて、3年目のま竹、孟宗竹を、毎年9月下旬から12月の水分の少ない時期にとります。虫もつきにくいいんです。

竹は、軽いイメージがありますが、生えている竹は、10メートル以上ありますし、ずっしりと重いです。山から、竹をおろして来るのは、大変な作業ですね。

2油抜き。

山でとった竹を、苛性ソーダを入れた100度の熱湯で15分間煮て、表面の汚れ、油を取り除きます。
青竹は、色もさわやかでとても良い香りがしますが、油ぬきをしないと腐りやすいんですよ。ご家庭で竹細工をするときも、おなべにお湯を入れてグツグツと15分ほど煮て下さいね。

また、火にあぶって、ジュージューと出てくる油を布で拭き取るという方法もあります。どちらの方法も、油臭いので換気をよくして始めて下さいね。

3乾燥。

山頂に運ばれた竹は、20日から1ヶ月間、天日で乾燥させます。油ぬきをしたばかりの竹は、まだ青さが残っていますが、次第に表面が象牙色に美しくなっていき、サラシ竹と呼ばれ、それぞれの工房に運ばれます。

木材ですと、しばらく寝かせたりするようですが、運ばれた竹は、すぐ使用できます。新しい竹の方が、スパン!と割れ、クルクルとよく曲がるようです。


2.ひご作り

駿河竹千筋細工は、日本全国にある編む竹細工と違って、細い丸ひごをさして組み立てるとても繊細な竹細工です。特徴であるひご作りについて説明します。

ひごは、別名千筋と呼ばれますが、これは、畳の幅3尺(約90センチ)に1000本並ぶほどということだそうです。鳥かごや虫籠を作ったとき鳥の羽根や鈴虫のひげを痛めないようになっています。
今では、繊細なデザインの基本になっていますよ。

実演をしていると、50代以上の方によく、「おれも若い頃よく、鳥籠を作ったなあ、ひごもよく削ったよ」と言われます。聞いてみると同じような作り方をしています。昔は、身近な金物屋さんなんかで、ひご作りの道具も売っていたようですね。

うちの工房にも、弟子が入りましたが、ひごづくりから覚えます。
削ったり割ったりと、基本的な作業を覚えますが、削るのには、刃物を研がなければなりませんね。
この研ぎが難しいんです。自分にあった刃物は、とてもよく切れて、削るのが楽しくなります。へたに研ぐと、竹は切れずに、息が切れます。(^^;

私もまだまだ未熟で、父が研いだ刃物にはかないません。

割り

ひごを作るときは、青竹の方が軟らかくて、良いようですが、1年中あるわけではないので、上で説明しました、サラシ竹を、数日水につけてやわらかくして使います。

竹の表面は、傷や汚れもあるので、皮をけずります。
けずったら、竹を1センチくらいの幅に割ります。

竹は、縦の繊維が強いので、鉈(なた)でパン!と簡単に割れます。勢いよくやると、竹を持っている左手を叩くときがあります。刀とちがい指が吹っ飛ぶほどではありませんが、かなり痛いです。
最初は、軍手をすると良いかもしれませんね。なお軍手の上から叩いても、結構痛いですよ。気をつけて下さいね。

弟子の修行は、最初は、この材料取りから始める場合が多いですね。小刀や鉈の使い方、研ぎ方を覚えます。私も3年以上、割っては曲げ、割っては曲げ、を繰り返しました。

へぎ

竹は、外側の皮に近い部分が強いので、ひごには、そちらを使います。
竹を持つ手と、鉈を持つ手のバランスで、へいでいきます。真竹だとピシピシパン!とリズミカルに、へいでいけますが、孟宗竹は、ネチネチとする場合が多く、苦労します。

厚み決め。

せん台という道具で厚みを決めます。編む竹細工の方もこの道具を使い、「へご」という、平べったい材料を取るようですね。

小割入れ。

二本の刃をたて、細かい切り込みをいれます。熟練するとスッスッスッといきます。慣れないと曲がったりしますね。刃を立てるのは、危ないのでカッターの刃と釘で代わりにしたりもしていますよ。

くじき。


切り込みを手で押し込み竹を切り裂きます。言葉では、説明しにくい技です。
竹は、縦に強い繊維が通っていますので、割れていきます。

この作業は、小学校の竹細工教室で一番人気があります。手品のように見えるようですね。

ひご引き

細くなったら、まとめて先をとがらせ、小さな穴に通します。
穴は、太い物から、細い物までいろいろあり、荒引き、中引き、仕上げ引きとだんだん細い穴に通していくと、きれいな丸ひごができます。まっすぐ引っ張らないと丸くならずにおむすびのようになったり、途中で切れたりしますよ。

ひごづくりは、ここまでです。
今は、すべて手作りと言うことではなく、機械で通す場合も多いです。
でも、機械で引いたひごは、曲げに弱いので、手引きの方がよいです。
また、極細や丸ではなく平べったいひごなどは、手で引きます。
手引きのひごの方が、少し角が残るのか、キラキラする感じですね。



3.組 立

輪作り。

竹を、細く割り、薄くするところまでは、ひごづくりと同じです。

幅9ミリ、厚み5ミリほどにした竹を、熱く熱した管(胴乱)に巻き付けて曲げます。

石油コンロやガスコンロを使いますので、冬は暖かくてちょうどいいですが、夏はたまりません。この道具は、昭和になってから、できたそうで、それまでは、胴乱を使わずに半月型のこてで、少しずつ曲げていました。
明治時代の菓子器がうちにあるのですが、丸がでこぼこしています。
★明治時代の「駿河竹千筋細工」については、こちらです。★

胴乱にあてて、約20秒ほど、曲げたあと、「さまし」という枠に入れ、冷ますときれいな丸ができます。

曲げたあとは、斜めに切り、特殊な接着剤で、つなぎます。
「駿河竹千筋細工」特有の技術で、「継ぎ手」と言います。
継ぎ手は、どこでつないであるか、わからないように削ります。

穴開け。

竹には、曲げる前に、はんこのようなもので、穴開け用の印を付けておきます。その印を見ながら、ボール盤という機械を使い、1本1本あけています。

作品により、穴を開ける角度を、変えていきます。
微妙な角度の違いで、作品の雰囲気が変わります。

単純な作業なので、自動機械でもできそうに感じますが、作品により、それぞれ輪の大きさがいろいろありますので、自動の機械を作るのは難しいんです。

ボール盤のないころには、「ばい」という、登呂の火お越しのような道具を使っていました。
横棒を上下に動かし、中心の棒を回転させます。
棒の先には、キリがついていて、穴を開けます。

単純な作業なので、自動的に送る道具も、作られました。
丸くした木に歯車のように、金具をつけてあります。
一回あけると一コマずれて、次の穴の位置に来ます。

以前、電気ガサをたくさん作っていた時期があって、自動穴あけ機が発明されたことがありました。うちでは使わなかったのですが、使った職人の中には高価で採算がとれないうちもあったようです。その後電気ガサが売れなくなるとその機械は使い物にならなくなってしまいました。

自動機械というのは、同じ製品をたくさん作るときには効果がありますが、作品により、それぞれ輪の大きさや穴の数が、ちがいますので、全ての作品用に、自動の機械を作るのは難しいです。
ほとんどは、微妙な調節ができる手作業であけています。

穴あけも微妙な角度の違いで作品の雰囲気が変わってきます。楽しいですよ。
もちろん気持ちもこもりますし。「この製品は、どんな人が使うのかな?」と思うと楽しくなってきます。
これからいい機械ができても、きっと補助的に使うだけで、専門に任せることはないと思います。

ひご曲げ。

ひごは、直線のまま使うことも、もちろんありますが、曲げることで、さまざまなデザインの作品を作ることができます。

竹ひごは、まとめて20〜30本、熱くした電気ごてに当てて曲げます。
同じように曲げないと、作品がデコボコしてしまいますので、難しい作業です。

こては、直径2〜15センチまで何種類もあります。
また、こて全体を使ったり、端から3分の1くらいを使ったりします。
曲げ方を工夫して、さまざまなデザインの作品を作っていきますよ。

40年ほど前には、この電気ごてがありませんでした。
その頃は、七輪に炭火をおこし、こてを3本ほど入れ、熱い物から使い、冷めたら交換して曲げたそうです。
今のように熱が一定しないので、苦労したでしょうね。

ひご差し(組立)

駿河竹千筋細工の一番の特徴は、丸い竹ひごを穴に差して、組み立てることです。
1本1本丁寧にひごをさして、完成します。
簡単そうに見えますが、虫籠のように、直線が多いひご差しの方が、逆に難しいですね。

穴開け、ひご曲げなどが、きちんとできていると、きれいに差せます。
一つ一つの段階がとても大切で、その前の段階がうまくいっていないと、形がしっかりできなかったり、作っているうちにどんどん、はずれてしまったりします。

駿府匠宿さんでは、ひごを差して、組み立てる体験ができます。
花器や盛籠、虫籠、行灯、風鈴、小物入れなど、いろいろな作品に、チャレンジしてみてくださいね。

静岡市 駿府匠宿
静岡市駿河区丸子3240-1 でんわ 054-256-1521

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