伝える 「駿河竹千筋細工」新しい技術求め続ける 黒田英一さん 静岡市 73歳 一本ずつ丁寧にしならせた竹ひごを組み立て、糸を張り合わせたような菓子皿や花器を次々に作り出す。
光を受けると無数の曲線がやわらかな影を描く。虫かごにコウロギや鈴虫を入れれば、日本の四季の移ろいが一層楽しめる」と制作の
手を休めてゆったり語る。小さいころから手が器用で、竹とんぼや飛行機を作れば誰にも負けなかった。この道に入ることを決めたのは十七歳の時。戦後焼け野原の中、腕一つで勝負できる職人に魅力を感じ、職人の叔父に師事した。
「伝統を守るだけでは前進しない」。先輩と一緒に静岡竹工芸協同組合を組織したのは三十年前。
問屋を通す従来のルートだけでは衰退すると、消費者と直接触れあう機会を積極的に設け、それまで〃秘め事〃だった職人の技を披露し合う場も作った。
「この努力が駿河竹干筋細工の知名度を上げた」と振り返る。今も客を前にした実演会は一番の勉強になる。
「『これ、いいね』なんて言われながら買ってもらうと職人みょうりに尽きる」と笑う。新しい技術を求め続ける心も変わらない。「いつまでたっても半人前だね」と真顔で語った。七十三歳。
静岡新聞 2004年12月1日朝刊 より引用しました。
伝統工芸士 黒田英一[作品]には、虫籠 花器 などがあります。
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