以前、「職人になる」という本を書いている方の取材を受けました。
「職人は、かっこいいからなりたいという若い方が多いから」と言うお話でした。
他にも取材に行かれたようですが、「かっこいいからなりたいというのは、もってのほか」と怒り出す職人さんが多かったそうです。
どんな職業もそうだと思いますが、かっこいいと思えない仕事では、長続きしないのではないでしょうか?かっこいいと思えるから、誇りも生まれると思いますし、夢も見れるのでしょう。
「かっこいい」の基準は、人それぞれだと思います。他人に負けない腕を持って、この仕事は自分以外にはできない! とか、独創的な作品を創りその工芸の歴史を変えて見せようとか、また、コツコツ創り、身近な人に喜んでもらいたいとか、それぞれだと思います。
ぜひ、かっこいい職人を目指して下さい。
どんな職人になりたいですか?
職人にもいろいろあります。ご紹介していきましょう。
1,作家タイプ
いろいろな工芸展や美術展などに出品する作品を作ります。「駿河竹千筋細工」には、現在このタイプがいません。
伝統工芸でもこうした作家タイプの方がいると、その工芸のイメージもよくなりますし、デザイン的、技術的にも向上するので挑戦して下さい。
収入面では、名前が売れて作品が高い値で売れるようにならないと大変かなと思いますが、定期的に個展を開いて、来てくれたお客さんを大切にしていって下さい。
ドラマにでてくるツンとすました作家先生ではなく、親しみのもてる作家が好きですよ。
芳名録などを用意して、必ず個展や公募展の際には、案内を出します。作品や作家のファンになってもらえると、とてもうれしいですよ。
2,先生タイプ
カルチャーセンターや自宅で教室を開きます。陶芸教室などは、よく見かけますね。また、黒田英一は、以前SBS学苑の教室で教えていましたし、現在も公民館のサークルで教えています。高校や専門学校で教えている職人もいます。
教えるには、とくに資格は必要ないとは思いますが、しっかり教えるには、ちゃんと修行して「伝統工芸士」などになってからの方が良いと思います。
生徒さん達は、頼ってきますので、その信頼を裏切らないようにしっかり面倒を見ていきましょう。
3,職人タイプ
自分のオリジナル作品を企画したり、注文商品をこつこつ作るのが職人です。技術はもちろん、センスも必要です。
竹細工のように自分で商品を企画して作る職人もいますが、漆器のように、問屋さんから木地を用意してもらって塗る仕事もあります。どちらの職人さんも腕が自慢ですね。
また、工芸品に対するお客様の関心も高いので、伝統工芸展などで実演を頼まれることもあります。今までの伝統文化を皆さんに紹介するチャンスなので、積極的に出ていきたいですね。
4,下請けタイプ
仕事は、親方や問屋さんから廻してもらいます。
「駿河竹千筋細工」の場合、輪などの部品だけを作ることもありますし、完成品を作ることもあります。
技術的には、決して劣ることがなく、むしろどんな物も作ることができる点では、親方よりも上かもしれません。
デザインなど新作を考え、親方に提案する事もあります。
営業などはせず黙々と作ります。
困る点は、安いこと。部品ですので、仕方ないかもしれません。
また、まとまった数の仕事の時はよいのですが、少なかったり、一定期間、ない場合もあります。
営業はしないと書きましたが、同業者を積極的にまわる方がよいのかもしれません。
こうした職人がいないと、伝統工芸は、続いていかないんですよね。
5,趣味で
職人になるよりも、体験教室に通いながら、作品を作り、時々工芸展などに出品します。ある教室では、30年も通っている生徒さんがいるそうです。こうした活動の方が、工芸そのものを楽しめますね。
また、仕事としては、ギャラリーに勤めるのもいいです。毎日良いものを見たり、また作家さんに出会ったりできて、すてきですよね。体験教室の助手なんかも面白いでしょう。
ふつうのサラリーマンをしていても、仕事のあと、毎日作業をするというのも集中できていいですよ。
先日まで開催していました、駿河竹千筋細工新作展では、趣味で駿河竹千筋細工を作っている方々の作品も、展示していました。
仕事にしている私達よりも、すぐれた作品が多かったです。
工芸は、仕事にするよりも、趣味にしておく方が、良いかもしれませんね。
まだまだいろいろなタイプがあると思いますが、どんな職人になりたいでしょうか?
センスを磨いて!
現在の職人の状況は、厳しいです。海外からの類似品は以前は安いだけで出来が悪かったのですが、ここ数年でだいぶよくなってきました。また、問屋さんから来る仕事も、海外の値段が基準になり安くなってきている業界もあります。
今と同じものをこのまま作っていても、勝ち目がないでしょう。これからの若い方は、今までにないセンスを求められています。いろいろな勉強をして、センスを磨き、海外製品に負けない商品を作っていきましょう!
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