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今までは、職人は、世襲制〜職人の家に生まれたものが跡を継ぐことが多かったです。
小さい頃から、親の仕事を見ていて、まわりからも「大きくなったら、お父さんの跡を継ぐんだよね」と言われ続けて、「そういうものだ」と思って大きくなって、「でもほかにも仕事はあるんじゃないか」といったんは外へ出たものの、やっぱり帰ってくる。
もちろん、他の仕事をせずに継いだり、他の仕事をして継がなかったり、の場合もありますが、伝統工芸は、道具も伝統だったりするので、世襲の方がはじめやすいようですね。
でも、最近は、この傾向が変わってきたようです。
静岡市には、伝統工芸後継者のグループである「するがクリエイティブ」があります。
私が入ったころ、15年ほど前だったでしょうか、ほとんどが、跡継ぎばかりでした。
しかし、最近では、跡継ぎではなく、自分から弟子入りして職人になった方が目立ってきました。
これは、静岡市には、クラフトマン・サポート制度があるからです。
静岡市の制度ですが、新しく弟子をとる工房に補助金が出されます。
3ヶ月のコースと、2年のコースがあるそうです。これにより今までよりも弟子をとりやすくなりました。
クラフトマンサポート事業
‐ 静岡市
世襲の多い世界で、世襲でない場合の職人のなり方について考えましょうね。
一般の方が職人になるには、体験教室を利用してこつを覚える、専門学校で勉強する、そして弟子入りする方法などがあります。
いずれにしても、、何をつくりたいのかを探しましょう。目標が見えなければ、がんばれませんよね。
地元の身近な体験教室やホームセンターで材料を買ったりして、楽しみながら見つけて下さい。また、工芸展などで、良い作品を見て感動することが大切ですね。
大量生産でできている身近な漆器や染色、木工品でも、もちろん手作りでできます。同じものでも手作りと工業製品では違いますね。心やぬくもりを込めていくのが、職人の仕事です。
手仕事は、働いた分しか収入になりません。また、作っても売れなければ収入になりません。
そういった厳しい世界なので、好きでなければ続けられないでしょう。ですから、納得のできる何をつくりたいのか、まずそれを見つけて下さいね。
●独学
図書館の本などで作り方を勉強し、ホームセンターなどで材料や道具をそろえて、作り始めます。いわゆる日曜大工ですね。マイペースでできるので、サラリーマンの方は始めやすいですね。
ただし、助言してくれる方が近くにいればいいのですが、図書館の本だけでは技術的にも限界がありますし、またホームセンターの材料は高い場合があります。
それから作品ができても販路が見つからないと、趣味で終わってしまいます。仕事にするのではなく、工芸展などに出品して見ると面白いかもしれませんね。
★富士山の麓で独学で竹細工作りをしている野村
忠志さんのスズメバチです。
このスズメバチは、本物を見ながら作っただけあって、迫力満点!今にも飛びかかりそうですよ。
●体験教室
駿府匠宿には、10回コースの講座がいろいろあります。講師は、静岡を代表する一流の職人さんです。
気軽に作ってみたいという趣味の方が多いですが、そこから、竹細工の世界に入った方もいますね。
10年ほど前に、父が教えていたSBS学苑では、何年もやっている方がいて、すばらしい竹細工を作る方がいます。胴乱やこてなども用意して、いろいろ作品を作っては、知人にプレゼントしています。
2011年、お正月の駿河竹千筋細工新作展では、一般の方から作品の公募をしました。五重の塔や、御殿虫かご、個性的な照明など、とてもすばらしい作品ばかりです。
体験教室の良いところは、順を追って教えてもらえ、質問もしやすいことです。だんだん先生と親しくなったら、工房へも、おじゃまさせてくれるよう、お願いしてみて下さい。
このように、カルチャースクールなどでこつを勉強してきて、あとは自分で研究しながら作っている方もいます。先生も、お金を取って教えているので、いやがらずに教えてくれます。
先生と懇意になれば、材料や道具も手に入ります。いい仕事が出来れば、弟子入りもさせてくれるかもしれません。
仕事として作るだけでなく、工芸展などに出品したり、気ままに作るのも良いですね。
とにかく、始めてみると、あこがれていた仕事の、いいところ悪いところもわかり、また先生とつながりができて、道も開けます。販路についても先生に聞いてみましょう。
★体験工房「駿府匠宿」
NHK文化センター
●専門学校など
一度工房に入ると、なかなか勉強する機会を見つけるのは大変なので、フリーの内に勉強されるのは、とても良いと思います。専門学校によっては、実技だけでなくデザインなども教えてくれます。
○京都伝統工芸大学校
2007年から、京都伝統工芸専門学校から京都伝統工芸大学校となりました。
どこかに就職していると、なかなか入る機会がなくなるので、学生の方やフリーターの方など、これから伝統工芸を志す方におすすめです。
弟子入りは、師匠に直接教えてもらえていいのですが、仕事を順を追ってでなく、その時の仕事を部分的に教わることが多いです。
学校は、ちゃんとした講師が、順を追って教えてくれるので覚えやすいと思います。
ただ、仕事というのは体で覚えることが大切で、たとえば竹細工なら、何百本もの竹を毎日割ることで、覚えていきます。学校ではそういったことができるかどうかはわかりません。
学校でも弟子入りでも結局は本人のやる気次第で、時間外にどれだけやれるかで、上達の仕方が変わりますね。
体験入学ができますので、まずはお問い合わせ、してみて下さいね。
京都市園部町小山東町二本松 1-1 電話 0771-63-1752
ホームページ http://www.task.ac.jp/task/
○別府産業工芸試験所
別府の訓練校は、失業保険をもらいながら勉強できるので人気があります。募集は1年に一回で倍率も高いので、運も必要かもしれませんね。
私は、数年前に見学に行って来ましたが、若い方からご年輩の方まで様々でした。もちろん女性の方も多かったですよ。
卒業後は、内職をやる方(とっても安いそうです)や続いて修行される方、成功した方は作家にもなっていたりと様々です。ただ、職人は最初から収入があるわけではないので、覚悟していた方がいいです。
竹工芸・訓練支援センター
〒874-0836 大分県別府市東荘園3−3
管理訓練課
Tel:0977-23-3609
ホームページ
○美術、芸術系の大学
技術的には、大学で覚えたことが役に立つかどうかは難しいですが、美的センスとか工芸に関する考え方、また先生や先輩、友人などの同窓生は、これからの大事な人脈になるんではないでしょうか。
それから公募展に応募したり、一般の職人がしないような活動に目が向いたりもするでしょう。
工芸は技法も多く、同じ竹工芸でも、静岡の「駿河竹千筋細工」、大分の別府竹細工、高山の茶せん、越前竹人形などいろいろあります。
染色には型染め、ろうけつ、絞りや筒書き、また絣などの織りも入れると様々です。そして、染料も藍や草木染め、化学染料などがありますね。
弟子入りすると技法は限定されますので、まだ決まっていないようでしたら、こうした大学、専門学校で勉強するのもいいでしょう。
大事なのは、学校以外の時間です。学校以外にうちでいろいろ研究して楽しみながら作ることができれば、良い職人の素質があります。
アルバイトするのも良いかもしれませんが、自分の人生にプラスになるようにして下さいね。
就職
家具職人などは、工房の場所、機械や材料など、始めるにはかなり資本がいりますよね。また、販売ルートの開拓などの営業もあり、個人的に始めるのはとても困難です。
目指す職人像にあった工房やメーカーの求人をチェックして、就職の条件を聞いてみるとか、もし求人がなくても先方に行って聞いてみるとか、してみたらいかがでしょう。きっと良いアドバイスが聞けるでしょう。
徒弟制度
修行というと昔から徒弟制度といわれるものがありました。一般には、あまりなじみのない言葉ですね。
●徒弟制度(とていせいど)
江戸時代頃から、手工業・商業などの職業で、親方の指導のもとで訓練をつみ一人前となる制度が始まりました。弟子は一般的には10年程度を契約期間とし、親方の家に寝起きして、無報酬で家庭内の雑務や親方の仕事を手伝い、技術を学びました。大工さんの場合なら1年目は雑用の間に道具の修理を、2年目には道具の研ぎをおぼえて仕事を手伝ったのち、技術習得にはいったといいます。年季明けには親方から道具をあたえられ、独立しました。
"徒弟制度" Microsoft(R) Encarta(R) . より引用。 |
私が子供の頃は、この徒弟がいました。裏にあった仕事場の2階に住み込みんでました。私が高校の時には、ウナギで有名な吉田町から徒弟がいて、時々実家からウナギを送ってもらいました。(^^)
中には、独立した人もいましたが、残念ながら、現在も続けている人はいません。
最後の弟子は、5年ほど前、吉田町から通いで来ていました。
静岡市のクラフトマンサポート制度を利用して、2年間修行した後独立しました。
今は、組合の仕事をしたり、独自のセンスで作品を作っています。
染織の職人さんとお話ししたのですが、長野県では、いまだに住み込みの徒弟制度が残っているとのことでした。お給料はなく、お小遣いを少々いただけるだけだそうです。
また、信楽焼では、専門学校もあるそうですが、工房に入って勉強する方が上達が早いそうです。
昔から定番の弟子入りですが、難しい場合が多いです。
1.不景気なので職人さんの仕事が減っている。
景気が良くて仕事が多ければ、下仕事(竹細工ですと竹割りなど)のために雇ったりできるのですが、工業製品や似たようなな輸入品なども増えて、現在の伝統工芸は、仕事が減っているところが多いですね。
こんな時代に、全然仕事ができない人を一般の会社と同じ給料を払って教えるというのは、かなり大変です。
なにしろ、職人の収入がサラリーマンよりも悪い場合が多いですから。
2.職人自身が高齢のため、教えるのは面倒。
伝統工芸の職人は、高齢者が多いです。
職人の仕事は、一生できると言っても、サラリーマンだったらとっくに定年の歳ですね。年金もらって、ゆっくりしたい方も多いでしょう。
今更、仕事を教えるのは、面倒という方も多いと思います。
でも、高齢では、材料を運んだり、加工するのは、体力的に大変です。こんな親方だからこそ、チャンスとも言えます。
身体が思うように動かない親方の手足になって仕事をすれば、ドンドン上達するでしょう。
そして、弟子としての一番の心配、独立後の仕事、道具にしても、親方の仕事を受け継ぐ事でクリアできるのではないでしょうか?
ですから、もし、高齢で仕事を辞めたいという親方がいたら、前向きにチャレンジして下さいね。
3.職人は、生活を変えたくない。
夫婦でのんびり昼寝をしながら仕事をしていたのに、他人が入ると気を使うという職人さんもいます。
前回と同じように、高齢の職人さんに多いようですが、あまり人を使ったことのない職人さんは、教えることも余り上手でない場合があります。
無理して、弟子入りしないで、他の元気な職人さんを捜した方がいいかもしれませんね。
また、昼間はざわざわしていて、集中できないから、真夜中に仕事をするという、私達が聞いてもびっくりするような職人さんもいます。
仕事のレベルは高いので、その仕事が尊敬でき、また苦労を感じなければがんばって弟子入りも悪くないでしょう。
ただ、その先生が、許可してくれるかどうかは、難しいところですね。
あまり、弟子入りを断られ続けると、「もうどこでもいいや〜」という気持ちになり勝ちですが、将来的に成功するかどうかは、先生によるところが大きいので、自分をしっかり持って、聞いてみましょう。
以上のように難しそうな弟子入りですが、お給料を期待しなければ、可能かと思います。
職人はどこも金銭的に苦しいので、お給料を払って仕事を教えてくれるところは少ないでしょう。サラリーマン的に工房に入られると迷惑すると思います。
普通に仕事をしているところに、いきなり教えて欲しいと言っても、事業所も、なかなか心の準備が必要です。どうしようか迷っているのが、現状だと思います。
あきらめずに、何回か通えば許されることもあります。それが、熱意だと思いますし、やる気ですし、また覚悟にも通じます。
仕事のある職人さんのところに弟子入りすれば、静岡市のように補助金があるところもあるので、お給料がでる可能性はあります。でも、最初の内は、仕事を覚えさせるのが大変なので、あまり期待しない方が良いですね。
このように、お金はいらない、仕事を覚えたい、うまくなりたいというやる気を感じられれば、弟子入りの可能性はあります。
またある程度自分でもできて、でも本格的に習いたい、という方なら教え甲斐があるので、喜んで迎えてくれると思いますよ。
京都に伝統工芸の学校がありますが、2年で授業料が100万円以上かかるそうです。制度を利用して弟子入りしている方の中には、学校へ行ったつもりで無給で弟子入りしている方もいるそうです。
弟子入り中の3,4年は、がまんして、早めに技術を習得し、独立してバリバリ稼ぐのが良いでしょう。
さて、「駿河竹千筋細工」では、この数年間に5人の若い方が始めています。
理由は、
●江戸時代からの「駿河竹千筋細工」を伝えるために、また若い方の感性が「駿河竹千筋細工」業界に新しい風を吹き込んでくれるのを期待しています。
●匠宿や小学校の教室などで、若い方が「駿河竹千筋細工」に触れる機会が増えてきました。
●静岡市のクラフトマン・サポート制度により、工房が後継者を受け入れやすくなりました。
抱えている職人の方も、引退しようと思ったところに来てくれて、逆に生き甲斐になったというお話も聞きました。
なお、「駿河竹千筋細工」以外の工芸品につきましては、産地の組合などに聞いてみて下さい。(伝統的工芸品に指定されていれば、必ず組合があります)
○産地は、こちらでご確認下さい。
「経済産業大臣指定伝統的工芸品」ホームページ
クラフトマン・サポート制度
静岡市の制度ですが、新しく弟子をとる工房に補助金が出されます。
3ヶ月のコースと、2年のコースがあるそうです。これにより今までよりも弟子をとりやすくなりました。
ただし、残念ながら、この制度は事業所向けなので、お弟子さんへの補助はありません。あるといいんですけどね。
今の時代、不景気なので事業所もそれほど仕事がなくて、廃業したり、転職する職人さんも少なくありません。
忙しい時期でしたら、お弟子さんに仕事をしてもらってお給料を支払えるのですが、生活に困っている職人さんもいます。でも、そんな職人さんにもすばらしい技術があり、またその技術を習いたい方がでてくれるようにとこの制度があるんだと思います。
以前、この制度を使ってうちの工房に2年間、竹細工をならいに来ている方がいました。
機械を使わず(「駿河竹千筋細工」は幅厚みをそろえるためなどに機械を使います)作る練習をしました。このように具体的な目標があると、事業所も教えやすいですね。
進学か就職か?
現在、高校生の方、技術的な向上を目指すのでしたら、すぐ弟子入りや就職等、実際に始めた方が早いですよね。大学などに行っている間に一人前の職人になれるかもしれません。
大学や専門学校に行くと、いろいろな仕事を学ぶことができます。
時間にも余裕があり、全国の工芸品やその他の工芸を見て歩くこともできます。アルバイトで全然違う仕事を体験することで、広い視野を持つこともできます。
また、同じ目標を持つ仲間を知ることは、いい励みになるでしょう。
いろいろな考え方を知ることは、これからの職人にとってとても重要なことだと思いますので、進学も考えられたらいいと思いますよ。
高齢者のための職人入門
高齢者が、今から、新しいことにチャレンジしようと言う気持ちはすごいですね!
さて、受け入れ先の可能性ですが、残念ながら、かなり少ないと思います。
「今から職人の修行をしたい」と言われれば、たぶんうちではお断りします。
やはり若い方の方が、この先の可能性がありますし、また、お給料も安く抑えられるからです。
でも、うちでは、まじめな内職さんに仕事を出すことがあります。
それは、簡単な網代編みやひご差しなどですが、親戚や、竹細工教室で勉強された方にお願いします。こちらは、ご高齢なかたが多いです。
ですから、もし高齢者が、職人の仕事に興味を持たれたら、すぐに体験教室に通い、ある程度の技術と、講師の方の信頼を得ることが大事ではないでしょうか?
そして、折を見て、講師の方に内職等のお仕事をお世話してもらうという方法が良いと思います。
また、もちろん、オリジナル作品を作り公募展の出展や個展を開催したり、仲間で楽しむのも良いですね。
「かっこいい職人になろう」は、お役に立てましたか?(アンケートのお願い)
○職人についてのお問合わせお待ちしています(^^)
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